かったと言うのだね」
「そうですとも。僕は、時計が間違なく、四時をぬかしてうったのをおぼえています。間違ありません」
千二は、きっぱり言った。
「そうかね。それほど言うのなら、間違ないだろう。だが、柱時計は、この通りちゃんと四時をうつんだからね。おかしな話さ」
先生は、腕ぐみをして、あきれ顔で、柱時計を見あげた。
「これには、何か、わけがあるんだ。――千二君は、この柱時計が、四時をぬかしてうったと言うのに、今鳴らしてみると、どっちの柱時計も、ちゃんと四時をうつ。なぜ、そんなことになるのだろうか。この答えが考え出せないうちは、博士の秘密は、それから先、何にもとけないんだ」
新田先生は、呻《うな》りながら、しきりに考えた。
「うむ、これくらいの謎が、とけないようでは、地球の人類の生命を救うなんて大仕事は、出来るはずがない。ちぇっ、新田、お前のあたまも、存外ぼんくらに出来ているなあ!」
知らない者がこれを横から見ていると、新田先生はおかしくなったんだろうと思ったであろう。そばに立っている千二少年も、何だか気味が悪くなった。
その時であった。新田先生は、急ににこにこ顔になると、
「ああ、そうか。謎はとけたぞ!」
と、ぴしゃりと手をうちあわせた。
「先生、わかりましたか」
と、千二は胸をおどらせてたずねた。柱時計がなぜ四時をうたなかったかという謎を、ついに先生がといたと言うのだから。
「わかったよ、千二君。こう考えれば、柱時計が四時をうたないように聞えるではないか」
と、新田先生は、思わずごくりとつばをのみこんで、
「いいかね。はじめ、第一時計も第二時計もとまっているんだ。そこで、針を指で動かしていくんだ。まず、どっちか第一の時計を、ぼうんと鳴らして一時さ。それから、もっと針を廻してぼうん、ぼうんで二時だ。それから、またさらに針をまわして、ぼうん、ぼうん、ぼうんで三時さ。わかるかね、千二君」
「それくらいのことなら、はじめから、僕にもよくわかっていますよ」
千二は、先生に、ばかにされたとでも思ったのか、頬をふくらませて答えた。
「それが、わかっているね。そんなら、よろしい。第一時計は、そのままにしておいて、さて次に、第二の柱時計をうごかすのさ」
「はあ、――」
「分針を、十二のところへもっていくと、第二の柱時計は、鳴りだした。ぼうん、ぼうん、ぼうん、ぼうん、
前へ
次へ
全318ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング