「そうなんですよ、先生」
「不思議だねえ」
 と、新田先生は、四時をうたない時計の謎を、どう解いてよいか迷った。
「ねえ、先生。その時計が四時をうたなかったのは、時計がこわれていて、四時のところでは鳴らないのではないでしょうか」
 千二は、おもしろい答えを考えだした。
「なるほど、それも一つの考えだね」
 と、新田先生はうなずいた。
「しかし千二君、柱時計というものは、たいへんがんじょうに出来ているものだ。四時だけ鳴らないというようなことは、まず起らないと思う。とにかく、それをしらべてみようじゃないか。さあ、先生と一しょに、博士の秘密室へいこう」
 新田先生は、千二をうながして、ふたたび博士の秘密室へはいっていった。
 うすぐらい電灯がつくと、室内は、さっきと全くかわらないがらんとした部屋であった。古びた柱時計が二つ壁にかかっているのも、さっきと同じことであった。もちろん二つの時計は、どっちも動いていなかった。
 千二は、この部屋の殺風景さに、ひどく驚いたようであった。
「先生、この部屋は、何だか、気味のわるい部屋ですね」
「そうだ、あまり気味のよい部屋だとは言えないね」
 そう言って、新田先生は、つかつかと柱時計の下に歩み寄り、時計の中を見ようとしたが、背がとどかない。そこで、先生は、梯子を探しにまた外へ出なければならなかった。
 一体蟻田博士の秘密室と、そうして四時に鳴らない柱時計の謎とは、どのような関係があるのであろうか。
 柱時計の中をしらべるため、新田先生と千二少年とは、部屋を出て、梯子をさがしにいったが、その梯子は、その隣の物置のような室内にあった。
「ははあ、博士は、いつもこの梯子をつかっているのだな」
 脚立のような形をしたその西洋梯子を、新田先生は、秘密室へかつぎこんだ。そうして柱時計の下においた。ちょうど、ほどよい高さであった。
「先生、僕、梯子をおさえていますよ」
「そうかね、じゃあ、先生はのぼってみるよ」
 新田先生は、梯子をのぼった。
 先生は、時計の扉を開いてマッチをつけると、その光をたよりに中をのぞきこんだ。
「先生、何か、かわったものが、見つかりましたか」
「そうだね。時計の中には、ラジオの受信機のように、電線が、ごたごたと引張りまわしてあるよ。しかし、この電線は、何のためにあるんだか、どうもよくわからない」
「先生、四時が鳴らない
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