うした、佐々。もう大丈夫か」
「さっきは、残念ながら、やっつけられましたが、もう大丈夫です。ねえ、課長。相手は人間でないそうですね。課長が、おばけの存在を認めるようになったとは驚きました。大へんなかわり方ですなあ」
「おばけというのは、どうもことばが悪いがしかし、たしかに、丸木という奴は、おばけの一種だ!」
課長は、そう言って、唇をかんだ。
怪人丸木は、どこへ逃げた。
大江山課長は、部下を励まして、あたりをさがさせた。中にも、佐々刑事は、さっき丸木にやっつけられたくやしさもあって、たいへんな、はりきり方であった。
「こんど丸木に出会ったら、僕は、どんなことがあっても、あいつの首を分捕ってやる」
佐々刑事は、そんなことを言っていた。
「怪人丸木の首を分捕る? そんなものを分捕って、どうするんだ」
と、同僚が聞くと、佐々は肩をゆすりあげて、
「ふん、あいつの首の使い道か。僕は、あいつの首をきざんで、ライスカレーの中へたたきこむつもりだ」
「えっ、君は、あいつの首を食うつもりか。とんでもないことだ、君は食人種かね」
「食人種? そうじゃないよ。丸木が人間なら、あいつの首を食べればそりゃ食人種さ。しかし丸木は、人間じゃないんだ。だから、僕は食人種になりはしないよ」
「じゃあ、何になるかなあ」
「食化種さ。お化の味を、僕が第一番に味わってみようというわけさ。もし、おいしかったら、君にも分けてやるよ」
「じょうだんじゃない。お化の肉のはいったライスカレーなど、まっぴらだ」
「さあ、くだらんことを言わないで、早く丸木をさがし出せよ」
「くだらんことを言っているのは、佐々君、君だよ」
そんなさわぎのうちに、とうとう不幸な半裸体の警官が見つかった。彼は、すっかり官服も帽子も奪いとられて、草むらに倒れていた。課長以下は、すぐさま手あつい介抱を加えたが、残念ながら、もうだめであった。肋骨《ろっこつ》が三本も折れて、ひどく内出血していた。
「かわいそうなことをした」
と、大江山課長は涙をのみ、
「丸木という奴は、いよいよ人間じゃない。人間なら、こんなに残酷なことは、しないだろうに」
20[#「20」は縦中横] 秘密室
こっちは、新田先生と千二少年とであった。二人は不思議な再会に、手をとって喜び合ったが、話はつきなかった。
だが、そのうちに、新田先生は、蟻田
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