遺憾です」
 と、悲しむべきしらせをよこした。
「なに、もう地球へは戻ることはできないのか」
 さすがのデニー老博士も愕然《がくぜん》とした。
 これを聞いたとき操縦室の一同は誰も皆、目がくらくらとした。遂に最悪の事態となったのだ。地球へ戻れないとは、ああ何という情けないことだ。
 だが、一同はこの悲しむべきでき事のため、さらに悲しんで涙にむせんでいる暇はなかったのである。そのわけは、冷酷なる宇宙塵の数群が、すぐそのあとに引続いて本艇を強襲したからであった。
 艇内は混乱の極に達した。はげしい震動が相ついで起った。艇はいまにもばらばらに分解して四散しそうであった。艇内を、ひゅうんと呻《うな》ってすごい速力で飛び交う塵塊があった。それは艇内の大切なる器物を片端からうちこわしていった。
 乗組員たちは唯も[#「唯も」はママ]自分の仕事の場所を守ることができなかった。マートン技師でさえ、もう何をすることもできない。応急灯は消えそのうちに彼を護っていてくれた鉄管の籠が塵塊のためひん曲げられ、もはやその能力を発揮することができなくなった。そのために彼は、他の乗組員と同じように乱舞する宇宙艇といっ
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