むずかしくなる。が、今の気味のわるい震動が第三舵の損傷だけで終ったのだろうか。それならばまだ運の強い方だ。
「艇長。地階八階に大きな穴があきました。二十トンもある塵塊がとびこんできたのです。幸いに乗組員には異状はありませんが、燃料をかなりたくさん持っていかれました」
深刻な報告が、高声器からとびだした。燃料を持って行かれたという。地階八階に大穴があいたともいう。これはどっちも本艇の安危に直接の関係がある。
「おい、グリーンだな」と老博士はマイクへ叫んだ。
「で、本艇は空中分解の危険があるだろうか」
「今のところ大丈夫でしょう。その二十トンの塵塊は反対の艇壁をつきやぶって外へとびだしてしまいましたから、まあよかったです」
「燃料の方は、どうか。本艇の航続力はどの程度に減ったか。このまま火星へ飛べるだろうか」
老博士は心配をかくしもせず叫んだ。
「火星までは大丈夫行けましょう。しかし……」
そこでグリーンの声が切れる。
「しかし……どうしたんだ、グリーン。はっきりいえ」
「はい」グリーンは絞めつけられるような声をふりあげ、
「しかしもはや地球へ戻るだけの燃料はなくなりました。まことに
前へ
次へ
全163ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング