マートン技師は舵をうんと引き、それから、流れる数字に従って舵を合わせた。この数字は安全航跡を示すもので、例のテレビジョンが自動的に測ってしらせて寄越すものであった。
それはよかったが、次の瞬間、艇ははげしく鳴り響き、そして震動した。
「落着いて、マートン。四象限へ舵一杯、もっと一杯」
「はい、もっと一杯、引いていますが、これで一杯です」
「あっ、危い!」
どど……ん。怪音と共に艇はぐらっと傾いた。そして二三度宙に放りあげられた感じであった。と、停電した。室内は応急灯だけとなり、人々の不安にみちた横顔へ深い影を彫りつけた。河合少年も、その中の一人だった。一体どうしたのであろうか。
遂に大混乱
操縦室の一同が、不安の底に放り込まれたとき、天井の高声器から、ひどくあわてた声が響き渡った。
「艇長。ピットです。第三舵が飛ばされてしまいました。宇宙塵塊のでかいのが、あっという間にその舵をもぎとってしまったのです。総員で応急修理中ですが、当分第三舵はききませんよ」
「ああ、わかった。元気をだして、できるだけ早くやってみてくれ」
第三舵の損傷が報告された。こうなると本艇の操縦は
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