ウチュウジンて?」
 ネッドが大きい目をぐるっと動かした。
「宇宙塵というのは、宇宙の塵なんだ。つまり星のかけらの小さいのが宇宙塵だ。これが火星の周囲をぐるっと取巻いている。だから火星の表面は一層見えにくいのさ」
 マートン技師は自分の説明が少年たちにわかったかどうか心配げな顔である。
「宇宙塵は、なぜ火星のまわりに集まっているんですか」
 張少年から質問が飛びだした。
「宇宙塵がなぜ火星を取巻くようになったかという問いだね。ううん、これはむずかしいことだ。いろいろ臆説はあるが、天文学者にもまだ本当のことはわかっていないんだ」
「学者にもわからないことがあるんですか」
 ふしぎそうに張はたずねる。
「もちろん、そうさ。学者は世界にたくさんいる。しかしその人たちの説き得た自然科学の謎は、まだほんのわずかだ。これから先何億万年かかっても、その全部はとき切れないだろう。そのように自然科学の奥は深いのだ」
「そんなに永いことかかっても、わからないもんですかねえ」
 河合少年は小首をかしげる。
「そんなに永いことかかってもわからないことを、今こつこつ一生けんめいにやっている学者なんておかしいです
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