の蔭に、月が小さく寄り添っている。
火星はどうしたであろう、見えるであろうか。
展望室をぐるっと廻って反対の窓にでる。あっ見えた。あの真赤な星だ。大きさは、もうお盆ぐらいに見える。あれが火星だ。あの毒々しい色の星に、一体何がまっているのであろうか。
火星の生物
「あいかわらず火星の表面は、ぼんやりと霞んでいるね」
いつのまにきたか、四少年の大好きなマートン技師が、彼等のうしろに立って、同じように展望窓から火星を見て、そういった。
「ああ、マートンさん。火星の表面はなぜあんなにぼんやりしているのですか」
河合少年は、こんなときに誰よりも先に質問したくなるのだった。
「ああ、霞んでいるわけをいいましょうか、あれはね、火星の表面には水蒸気があるからだ。地球だってそうだ。水蒸気があるから雲があって、今日だって大陸の形などよく見えやしない。火星の水蒸気は、地球の水蒸気と比べて二十分の一しかない。その割に、火星の表面がぼんやりしているわけは、もう一つある。それは火星の周囲をかなり夥《おびただ》しい宇宙塵《うちゅうじん》が取巻いているせいだ。宇宙塵てわかるかね」
「何だろうな、
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