」
「そうだ。これまでに費した研究の結果を、ここで十分に発揮して、火星と地球との交通を開くことに成功したいものだ。諸君、大いにやろうぜ」
「ああ、やるとも、やるとも、地球人類の名誉にかけて、このことは成功させてみせる」
「火星へ一番乗りができたら、僕は火星の上で土になっても悔《く》いないぞ」
乗組員たちは永年火星探険に強い憧れをもち今日まで苦労を積んできた人ばかり、デニー老博士に応えて協力を誓った。そして互に激励しあったのであった。
それ以来、この宇宙艇の中には春のような明るさが流れた。皆々の覚悟はできたのだ。まだ人類の到達したことのない遠大なる目標火星探険へまっしぐらに進んで行くのだ。
四少年たちも同じように、いや大人たちよりもずっと強く、火星を探険することをよろこんでいた。その日彼等は艇の展望台の窓に顔を寄せて、外を眺めた。
暗黒かぎりなき大宇宙の姿よ。なんという巨大なる空間であろうか。その暗黒の中に、諸星はダイヤモンドのようにきらめいていた。また西の方には、満月の十数倍もある大きな地球が輝いていた、あそこから出発したのに違いないが、こうして見ていると嘘のような気がする。そ
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