いや本艇に予期以上の燃料が蓄えてあったことがわかったので、この点では心配ないと思う。食糧は燃料ほど十分ではなく、いっぱいいっぱいの程度である。だから火星へ直行する場合は、これから当分のうち少し減食しなければならないと思う」
「火星へ行きましょう」
「賛成、ここまで来たんだから火星へ行ってみたい」
「どうせわれわれは火星探険協会員だから、火星へ向って苦労するのは元より覚悟の上です。行きましょう、火星へ」
乗組員たちは皆火星へ行きたがった。地球へ引返したいと申出る者は、只の一人もなかった。
これを見て、デニー老博士は大満足であった。
「では、本艇はこれより火星へ直行することに決める。本日の観測によれば、火星まであと十一日かかると思う。その間に、諸君はかねての研究にもとづき、十分の準備をせられるよう希望する。火星に上陸できるかどうかは、もうすこし先になってみないと決めかねるが、ともかくも明日、上陸後の編成を発表する。何分《なにぶん》にも乗組員の数が少ないから、各人はそれぞれ相当重い役割をつとめなければならない。それは覚悟して置いてもらいましょう」
「何でもやります。どしどし命令して下さい
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