、へんなことがあるんだよ。パイ缶をあけたんだよ。すると中からパイナップルがぬうっと出てきたんだよ。まるでパイナップルが生きているとしか思えないんだ。それとね、甘いおつゆがね、やはり缶から湯気のようにあがってきて、そこら中をふらふら漂《ただよ》うんだよ。おどろいたねえ。まるで化物屋敷みたいだ」
「ふうん、それはふしぎだなあ」
「だからこうして缶の上をお皿でおさえているんだ。気をつけてたべないといけないぜ」
「どういうわけだろうね、それは……」
 河合はネッドから缶をうけると、ふたになっている皿を下へおいた。すると缶の中からにょろにょろと甘いおつゆが煙のように出てきた。そしてその下から、黄いろいパイナップルの一片がゆらゆらとせりあがってきた。
「ああこれだね。へんだなあ」
「早く、フォークでおさえないと、パイナップルが逃げちまうよ。さっきも調理場で、一缶分そっくり逃げられちまったんだ」
「なるほど、これはいけない。パイナップル、待ってくれ」
 河合はフォークをふるって空中を泳ぐようにして、動いているパイナップルの一片をぐさりとつきさした。
 これは一体どうしたわけだろう。
 地球からもうか
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