へ寄ってきた。そういわれると、なるほど河合は自分の服が油だらけになっているのに気がついた。
「ちょっとお手伝いをしたところが、この有様さ。ところで張君は、うまくやっているかい」
と、河合は料理係になった張少年のことを心配してたずねた。
「張君のことか。彼奴は大喜びだよ。なぜって、御馳走のつまった缶詰の中にうづまっているんだからね。ところで君は何をたべるかね。何でも持ってきてやるよ」
ネッドは、にこにこして、たずねた。
「そうだね、あついコーヒーとね。それから甘いものだ。ショート・ケーキか、パイナップルの缶詰でもいいよ」
「よし、何でもあるから、うんと持ってこよう」
「でも、食料品が足りないという話だから持って来るのは少しでいいよ」
「なあに、うんとあるから大丈夫」
ネッドは心得顔で、調理場へ入っていった。
河合が待っていると、調理場で大きな叫び声が聞えた。何だろうと思っていると、間もなくネッドが妙な顔をして河合の方へやってきた。彼は左手でパイ缶を持ち、右手には皿を持ち、その皿でパイ缶を上からおさえつけるようにしている。
「どうしたんだ、ネッド」
と、河合はたずねた。
「いやあ
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