なり遠くはなれたため、重力が減ってきたせいである。重力が減ると、物質はみんな軽くなる。そのために、こうしたふしぎな現象が次々に起って、人々をおどろかせ、まごつかせるのであった。


   当った予言


 この日、デニー博士はついにコーヒーに追駆けられた。まことに前代未聞の珍事件であった。そしてそれをはっきりと目で見た山木が、仲間の少年たちの集っている食堂へとびこんできて、その顛末《てんまつ》を語った。
「ああ、僕は今日ぐらいびっくりしたことはないよ。だってコーヒーがね、本当にデニー博士を追駆けまわしたんだよ。そして僕は、その湯気のたつ熱いコーヒーが博士を火傷《やけど》させないようにと思って、一生けんめいコーヒーと角力をとったのさ。そしてこれ、僕はこんなに両手を火傷しちゃった」
 山木はそういって、火傷で赤くふくれあがった両手を、河合と張とネッドの前にだして見せた。
「やあ、ひどい火傷だ」
「でも、君のいうことがよくわからないね、コーヒーがデニー博士を追駆けたといって、それは何のことかね」
 ネッドは、顔を前へつきだした。
「コーヒーが博士を追駆けたのさ。それしかいいようがないよ」
 
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