、そういった。
「そう簡単にはいかないよ。出発も三週間早かったし、方向も大体あっているとはいえ少しはずれているし、それからエンジンを制御すること、食糧問題のこと、そういうものがすべて満足にいかないと、火星に出会うところまでいかない。僕たちは今一所けんめいにそのような方向へ持っていこうと努力しているんだよ」
マートン技師の顔にははっきりと苦悩の色が出ていた。
「食糧も少いのですか」
ネッドが心配そうにたずねた。彼は誰よりもおなかのすく性質だったから。
「ああ、不足だね。さっき報告があったところでは、三ヶ月分があるかどうか、すこし心配だそうだ」
「たった三ヶ月分ですか」
「マートンさん。火星までは日数にしてどれだけかかるのですか」
「始めの計画では、最もいいときに出発すると約三十日後には火星に達する予定だった。それには時速十万キロを出し、火星までの直線距離を五千五百万キロとして航路の方はこれより曲って行くから結局三十日ぐらいかかることになっていたんだ」
「僕たちもぼんやりしないで、大人の人々といっしょに働こうじゃないか」
河合がいった。
「そうだ。そうだ。それはいいことだ」
「何でも
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