って、手帖に何かしきりに書きこんでいる。
「やっ、星が見えるぞ、あそこに……昼間だっていうのに星が見えらあ」
 山木がおどろいて、指を高く上に伸ばした。すると今まで黙っていた河合が、手帖から目をはなして、「そうだとも。このあたりは成層圏《せいそうけん》だからねえ。僕の計算によると、もう高度は十五キロぐらいになっているはずだ」
「成層圏! いつの間に成層圏へはいったんだか、気がつかなかったよ」
「これからますます空は暗くなるから星が見える。だんだん星の数がふえる」
「ほう、神秘な国」
 張が感嘆の声を放った。
「ああ下界があんなにぼんやり霞んで来ちゃったよ。ああ、地球が消えて行く」
 ネッドが、泣き声になった。
 しかし地球は消えはしなかった。ただ地球の陸や河や海の境界がだんだんぼんやりしてきて、地形が分らなくなった。そのかわり全体がぎらぎらと眩《まぶ》しく銀色に光を増した。今や自分たちが大宇宙の真只中に在ることが、誰にもはっきり感ぜられた。


   エンジンなおらず


 そのとき四少年の大好きな青年技師ビル・マートンが廊下をこっちへ急ぎ足で来るのを河合が見つけた。
「マートンさん、
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