へ引返せないんだとさ」
「困ったな。一体われわれはこの先どうなるんだ」
「どうなるって……さあ、どうなるかなあ」
 天空飛ぶ巨塔にとりのこされた人たちは、窓から下界を見おろして、すっかり青くなっている。そういっているうちにも、家も森も川も、どんどん小さくなっていく。天空飛ぶ巨塔――いや巨大なる宇宙艇は、今やぐんぐん飛行速度をはやめて高度をあげつつある。
「いや、とにかく、このまんまじゃ、どんどん地球から遠去かっていくわけだから、やがてわれわれは宇宙の迷子《まいご》になってしまうだろうね」
「なに、宇宙の迷子? いやだねえ、それは宇宙にもおまわりさんがいて、迷子になりましたから道を教えて下さい、うちへ送って下さいといって頼めるならいいんだけれど……」
「そうはいかないよ。宇宙の迷子になって、そのはては食糧がなくなって餓死だよ」
「餓死? いやだねえ、いよいよいやだねえ。僕は日頃からくいしん坊だから、餓死となれば第一番に死んじまうよ。何とかならないものかなあ」
「なにしろエンジンが真赤になってひとりで働いていてねえ、どうにも手がつけられないんだそうだ」
「方向舵ぐらい曲げられるだろうが」

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