へんなことになったもんだ」
 崖下は川の一部分であったが、水のない河原で、青草がしげっていたのは何より幸いであった。かの競技用自動車は、崖から落ちて何回かくるくるひっくりかえって転げたらしく、もうすこしで流れにとびこみそうなところで、腹を天に向けていた。それに乗っていた二人の少年は、一人がすぐ崖下に、一人はそれから十メートルも先に投げ出されていた。
 山木と河合は、崖をつたわって、ずるずると下に滑《すべ》り下りた。
「やあ、やっぱりそうだ。ネッドだ!」
 河合が、たおれている少年を抱きおこして、その顔を見て叫んだ。
「ええっ、ネッドか。かわいそうに、もう息をしていないか」
「ああ、息がとまっている。もう死んでしまったんだよ、かわいそうに……」
 山木と河合は、たまらなくなって、この黒い友達の顔の上へ涙をぽろぽろおとした。こうなると知ったら、むりをしてでもネッドたちを箱自動車のうしろにでも別の車にのせて引張ってきてやるのだったと後悔《こうかい》した。
 そのとき、ネッドの死骸が大きなくしゃみをした。ネッドの死骸が、山木と河合の腕の中で、ぶるぶるっと慄《ふる》えた。山木と河合はびっくりして
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