で宇宙艇を護りつづけてきたデニー博士以下の乗組員たちも、哀れ、火星着陸の声を聞くと共に異境の海に全員溺死してしまったであろう。博士の沈着にして果断な処置が、危機一髪のところで全員を救ったのだ。
「沙漠! 沙漠!」
 右側の噴流器から、その全部ではないが、二三本の猛烈なる黒色|瓦斯《ガス》を吹きだしたので、宇宙艇はお尻を右に曲げたとたんに、海が無くなって、白い沙漠が現れた。それから四五秒後に、轟然《ごうぜん》たる音響と共に、宇宙艇の腹部が砂原に接触した。これこそ、記録すべき火星着陸の瞬間だった。
「開放……」
 エンジンは外《はず》された。弾力はまだ残っていた。宇宙艇は沙漠のまん中を、濛々と砂煙をあげてなおも滑走した。
 が、何が幸いになるか分らないもので、この沙漠着陸のおかげで、宇宙艇の尾部における火災が俄かに下火となった。


   感激の乗組員


 滑走すること約三千メートルで宇宙艇はやっと停止したのだった。
 全員は、おどりあがって歓呼の声をあげた。誰の目からも、よろこびの涙があふれて頬をぬらしていた。そうでもあろう。火星への大航空が遂に自分たちの手によって完成したのである。乗
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