気分は俄《にわ》かにさわやかとなった。立っていた者は、へたへたとその場に崩れるように尻餅をついた。
 油の海の中に気を失っているネッドが、河合によって助け起された。そこへマートン技師が駆けつけて、活《かつ》を入れてくれたので、ネッドは息をふきかえした。助けられた者も、助けた者も、共に顔はまっ黒で、全身から油がしたたり、まるで油坊主のようであった。
「……高度五百メートル、六百メートル。少し上昇していきます」
 いつ、元の双眼鏡へ戻ったか、山木が元気な声で叫んだ。
 と、デニー博士がよろよろとよろめきながら、指揮台の手すりを力に立上った。
「マートン技師。重力中和機を調整するのだ。着陸用意。舵を下げろ。五度へ下げろ。それから零度へ戻せ……」
 マートンが、油をはねとばしながら駈け出した。
「……大きな密林だ。密林だ。あっ、密林が切れて、今度は海だ。海、海……」
 山木が叫ぶ。
「右旋回……」デニー博士の声。
「なに、やっぱり駄目か。……噴流器の右側の列を使うんだ。早く早くしろ」
 博士のこの言葉がなかったら、宇宙艇はむざんにも火星の海に頭を突込んで沈んでしまったろう。そうなれば折角ここま
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