るのです。この道が出来ているために、大きな音もなんにもしません。ピチッという位です。
 或る所で、それはそれは立派な避雷針を建てました。主人公は大自慢です。何処《どこ》の家のより立派だというのです。ところが、間もなく雷鳴《らいめい》が始まりましたが、雷は天地も崩《くず》れるような音をたてて真先《まっさき》にこの家に落ちました。勿論《もちろん》人死《ひとじに》が出来、家は雷雨《らいう》の中に焔々《えんえん》と燃えあがりました。これはスグスグ雷はいつもの調子で、針の上に落ちてみますと、針の下から地中へ行く道が作ってないのです。つまり銅線が接《つな》いでありません。仕方なしに屋根や柱、襖《ふすま》に障子などを伝わって地中へ辛《かろ》うじて逃げたのです。この家の主人は避雷針の針ばかりを見て来て、肝心《かんじん》の銅線や接地板《せっちばん》の必要なことに気がつかなかったのでした。
 それと又別の話に、或る村で避雷針を立てましたが、これは電気的に完全な避雷針でしたが、ところがその針を立ててから、その村の落雷が俄《にわ》かに殖《ふ》えたという噂が立ちました。そんな馬鹿な話はないと、学者はてんで受けつ
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