ってしまうので、雑誌と本の店を開いた。
 源一の花店は、十一階へ移った。
「源どん。一坪館、りっぱになった。これで君は満足したか」
 ある日、ヘーイ少佐がたずねて来て、笑いながら源一にきいた。
 すると源一は、首を横にふった。
「まだまだ、満足しません。もっと大きなものを作りたいんです」
「ひゅウ」少佐は口笛をふいて、おどろいてみせた。
「これ以上大きな家ができるとは思わない」


   二十年後


「ヘーイさん。ぼくの夢をここに図面にしてかいておきました。これを見て下さい」
 源一は、そういってヘーイ少佐の前に、図面をひろげてみせた。
「わははは。これはいったい何ですか」
 ふだんは落ちつきはらっている少佐が、ひどくおどろいて、図面の前に頭をふった。
 そうでもあろう。その図面には、大きな飛行場がかいてあったのだ。
 もっともその飛行場は、大地の上にあるものではなく、高架式《こうかしき》になっているのだ。つまり、飛行場の下に、大建築物の並んだ近代都市が見えるのだ。飛行場は高架式で、源一の図面によれば百四十四本の支柱《しちゅう》でささえられていた。
 その支柱は、約五十メートルの高さ
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