し、これ式の一坪館をつくろうや」
源一は、一つのヒントをつかんだ。
摩天閣《まてんかく》
源一はヘーイ少佐に相談をして、十二階のはりだし式になった一坪館をつくることになった。
これは十階までが一坪であるが、十一階と十二階は、横にはりだしている。そのはりだしをささえるために八、九階あたりからななめ上へ鋼鉄のビーム(大きな腕金《うでがね》)をつきだして、下からささえているのだった。なかなか名案であった。
こうした構造によって十一階、十二階は、他の階の三倍ぐらいの広さになった。これならかなり品物をならべることができる。ヘーイ少佐のためにゆっくりしたベッドを用意することもできると、源一はよろこんだ。
少佐は源一のために、またいろいろと力を貸してくれた。
矢口家のおかみさんの方は、もちろん大のり気になってセメントやお金をつぎこんでくれた。
こうして、新しい一坪館は、十二階の摩天閣《まてんかく》となって、銀座を行く人々にお目みえした。
「いよう、すごいものを建てたね。いったい、何階あるんだ」
「地上が十二階だとさ。地階が五階あるから、これもあわせると十七階だあね」
「ほ
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