》のいい顔をぬっと店の中へ入れた。
「やあ、おかえりなさい。待ってましたよ」
 源一は少佐にとびついて手をにぎってふった。
「ほう、源どんへおみやげだ。この本、気にいるだろう」
 そういってヘーイ少佐が源一の手にわたしたのはアメリカ版のりっぱな大形の本だった。
「英語の本ですね。ぼく、はずかしいけれど、きっぱり英語は読めないんです」
「心配いらない。本をひらいてごらん」
 源一は少佐にいわれたとおりにした。どのページにも建築物の図と設計図とがついていた。すばらしい美本の建築設計集であった。
「なるほど。画なら分りますよ」
「それ、みたまえ。はははは」
 四百ページもあるその本には、各種類の近代建築物がのっていた。源一は少佐がそばにいるのもわすれて、ねっしんに各ページを見ていった。
「これはおもしろい。こんなことができるのかなあ。ねえヘーイさん」
 源一が少佐の方へさしだした図面は、塔の形をした建物で、下の方が細く上へいくにしたがってひろがっている。
「できるね。つまり鉄のビームを組んで、横にはりだせばいい。鉄橋や無線局の鉄塔で、そうなっているものが少くない。ほら、ここに出ている」
「よ
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