んきゅうくつなねかたをしなければならなかった。一坪館だから、たてもよこも六尺はあったが、それは家の外側の寸法だ。あつい壁があるから、中へはいると寸法がちぢまっているのだ。
 でも少佐は不平もいわず、ゆかいな歌を口笛でふきながら、三階でやすんだ。


   建築競争


「一坪館だって三階建で地下室もあるんだ。こちとらも、ぼんやりしていられないぜ」
 一坪館の建設にあおられて、銀座かいわいの商人たちも、これまでの平家建や二階建では、気がひけるというので、今までの店をばらばらにこわして、また新しく建設をはじめた。そしてこんどはだんぜん三階建が多くなった。
 もちろん、銀座をあるく人のみなりも、ずっとよくなってきた。むかしのようなゲートルに戦闘帽《せんとうぼう》の人なんか、どこにもみられなくなった。モンペもすがたをけした。女はスカートのついた服をきてあるいた。男たちのズボンのおり目はきちんとついていたし、靴はぴかぴかにみがかれていた。それはぼろ靴でほうぼうが修理してあったが……。
 時代は、すばやくうつっていくのだ。平和が来て、ひとびとは安心して文化のみちをふんですすむのだ。そして銀座かいわ
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