なおった。君があのとき、すばやくかけつけて、すぐ病院につれていってくれたから、わるいばいきんも入らなかったんだ。だからこんなに早くよくなった。ありがとう、ありがとう」
「それはよかったですね。とにかく神さまがぼくをヘーイさんにひきあわせてくだすったのだと思って、かんしゃしています」
「ほんとだ。ふしぎなえんだね、ゲンドン」
「ヘーイさんの好きなお酒でも一ぱいあげたいけれど、今は何もないんでね」
「いらない、いらない、酒はぼくの方にうんとある。持って来てあげてもいい」
「ぼくは、酒をのみません」
「ああ、そうか」少佐は、それはざんねんだという顔をしたが、それから彼は改《あらた》まった調子で「この店は、よく売れるかね」と聞いた。
 源一は、正直にちかごろすっかり売行のわるくなったことをのべた。値段を下げても買い手が来ないことをいった。
 少佐はそれを聞いていて、うなずいた。
「花を売るためには、店をもっと美しくしなくてはならない。この店のテントはよごれていけない。なぜ近所のように家をたてないのか」
 少佐はそういって、たずねた。そこで源一は、この一坪に家をたてるには一万円かかるが、とてもそ
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