どんな高い値段札《ねだんふだ》がついてるかを見たいというので、若い人はもちろん、いい年をした老人などもわっしょいわっしょいと銀座へおしだした。
そしてそれが新しい話題となって、どんどん人から人へと伝わっていくものだから、それを聞き伝えた人々は、われもわれもと銀座へ出てくるのだった。
「高いね、高いね、これじゃ何にも買えないや」
といいながら、はじめは見物ばかりして行く人々ばかりのようであったが、そういう人たちも、たびたび銀座をあるいているうちに、高値《たかね》になれてしまい、そしていつも不自由を感じている鞄《かばん》だのマッチだのライターだのを見てほしくなって買ってしまうのだった。そうして銀座では、ものすごく物が売れるようになった。源一のテント店はどうなったであろうか。
あわれにも彼のテント店は雨にたたかれて汚《きたな》い色と化し、みすぼらしさを加えた、そればかりか両隣《りょうどな》りもお向いも、みんな本建築になってしまったので、源一のテント店は一そうみすぼらしくなってしまった。源一の心境《しんきょう》はどうなんだろう。
暁《あかつき》の街道《かいどう》
銀座の表
前へ
次へ
全61ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング