しくなった。
 表通りの建築がすすむにつれ、こんどは銀座の裏通りの建築がはじまった。表通りがにぎやかになるのなら、裏通りへも人が来るにちがいない、だから表通りにおくれないように商売家をたてようというねらいだった。
 そういう建築主《けんちくぬし》は、ないないといいながらも、たくさんのお金を持っていて、「こう高くちゃ、家をたてただけで、財布《さいふ》がからになってしまう」などとこぼしつつ、どんどん家をたてるのだった。
 一日ごとに目に見えて銀座の表通りは家がたちそろいにぎやかになっていった。それと競争のように、裏通りの方も日に日に町並がかわって、新店があちらにもこちらにも開店祝いのびらをにぎやかにはりだした。「銀座が復興したね。ずいぶんにぎやかになったね」
「そうだってね。今日は、行ってみようと思ってたところだ、そんなに復興したかい」
「君はまだ行ってないのか。じゃあ早く行ってみたまえ、びっくりするから。品物も、なんでもならんでいるね。そのかわり、目の玉がとびだすほど高いけれどね」
 品物が高いそうなといわれても、それじゃあ銀座へ行くのはよそうやという者はなく、どんな品物がならんでいて、
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