通りの復興|店舗《てんぽ》もすっかり出来上り、りっぱになったので、昔のように表通りのどこからでも、源一の店が見えるというわけにはいかなかった。それに源一のみすぼらしいテント店のまわりも、みんな本建築《ほんけんちく》になってしまったので、源一の店のみすぼらしさは一そう目についた。したがって花を買ってくれるお客さんの数も、だんだん少くなった。
源一はしぶい顔をして店のまん中に、石のように動かなかった。(うちも、本建築にしたいんだが、まだお金がそんなに溜《たま》っていない。ああ、あ、いつになったら、ちゃんとした店が、建てられるのかなあ)
源一のなげきは大きかった。
(一生けんめいに働いているんだが、思うようにもうからない。サービスも一生けんめいやっているんだが、思うようにお客さんが来てくれない。どうすれば、うんとお金が手に入るかなあ)
そのころ新聞には、毎日のように強盗《ごうとう》事件が報道されていた。一夜のうちに、強盗の手にわたる金額は何十万円、何百万円にのぼった。源一は、まさか強盗になろうという気はしなかった。しかし世間の家には、よくまあそんな大きな金がころがっているものだと感心し
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