が買っていくものか。この坊や、よっぽど頭がどうかしてるぜ。わっはっはっ」と、三人の若者は、源一の頭へ、あざけりの大笑いをあびせかけた。
源一は、しゃくにさわって、下から胸へぐっとあがってくるものを感じた。(なにをバカヤロウ、何を売ろうと、ひとのことだ。おせっかいはよしやがれ)と、かなわないまでも三人の若者をどなりつけてやりたかった。が、源一は、一生けんめいに腹の立つのを自分でおさえつけた。こんなにおたがいに焼けちまい、みじめになっているのに、このうえけんかをしてどうなるだろうか。仲よくしなければならないんだ。たすけあわなければならないんだ。笑顔《えがお》でいかなければならないんだ。
「あははは、おかしいねえ」と、源一は、気をかえて笑った。
「あれッ。自分でおかしいといっているよ、この小僧《こぞう》は……」
「誰も買わなきゃ、あんちゃんたち、買ってくださいよ」
「しんぞうだよ、この虻《あぶ》小僧は。みそ汁で顔を洗って出直せ」
「ああ、みそ汁がほしい」
「そらみろ。だからよ、食いものはみな買いたくなるんだ。花はだめだ。店をひらくだけ損《そん》だよ」
「でも、ぼくはれんげ草を売るです。だん
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