の三軒茶屋《さんげんぢゃや》よりもうすこし先のところから始まって、多摩川《たまがわ》の川っぷちまでの間に多分みつかるだろう、と教えてくれた。
「ありがとうございました」
源一はうれしくて大きな声でお礼をいうと、再び車にうちのって走りだした。しかし、行けども行けども、あいかわらずのひどい焼跡つづきで、だんだん心細くなって来た。
こんな時に花をさがしに走っている自分が、世界一のまぬけな人間のように思われて来るのだった。
れんげ草《そう》
「三軒茶屋《さんげんぢゃや》は、まだでしょうか」
源一は、とちゅうでオート三輪車をとどめて、道ばたにぐったりなって休んでいる大人に声をかけた。
「三軒茶屋だって、三軒茶屋はもう通りすぎたよ。ここは中里《なかざと》だよ」
「へえッ通りすぎましたか」源一のおぼえている三軒茶屋は、大きな建物のならんだにぎやかな町だったが、それも焼けてしまって、ぺちゃんこの灰の原っぱになったため、通りすぎたのに気がつかなかったらしい。「多摩川へ行くのは、こっちですかね」
「多摩川だね、多摩川なら、これをずんずん行けば一本道で二子《ふたこ》の大橋へ出るよ」
「あ
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