ん」
「罰金は二、三日うちに届けますよォ」
「黙って入らんか。わしの命令だッ!」
 レッドとヤーロが手術室の中に姿を消してから、約一時間の後|扉《ドア》が明いて、一人の人間が出て来た。レッドのようでもあり、ヤーロのようでもあった。よく見ると縦半分《たてはんぶん》に切断した二人の身体を半分ずつ接《つ》ぎ合わせてあった。右がレッドで、左がヤーロ。ちっとも足並が揃わず、二本の手は激しく抓《つね》り合っている。
「さあ、こっちへ来い」と課長は意地悪い笑《え》みを浮べて云った。
「当分この状態で暮してみろ。不便で参ったら、例の罰金を調達《ちょうたつ》してこい。そうすれば元々どおり、レッドはレッド、ヤーロはヤーロの身体にしてやる。金が払えないうちは駄目だぞォ」
「課長、ひでえや。もう一人のあっし[#「あっし」に傍点]達はどうなるんで……」
「あれは人質にとっといて今日から下水掃除をさせる。辛けりゃ早く金を納《おさ》めて引取りに来い」



底本:「海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島」三一書房
   1989(平成元)年4月15日第1版第1刷発行
初出:「モダン日本」モダン日本社
   1934(昭
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