のは、たしかに例の秘密団体の諜者《ちょうじゃ》たちであったのだ。木村といい山下といい、それは皆、その要員であることが分った。
 最後に残る謎は、なぜ帆村をこうして四日間も引張りまわしたかということだ。
「それは分っているじゃないか。君の事務所に持っている短波通信機だよ」とその専門家はずばりと星を指した。
「えっ――」
「なあに、例の通信機の押収で、彼奴等は東京と上海との無電連絡が出来なくなったというわけさ。そこで目をつけたのは、君のところの通信機だ。そこで君を四日間、事務所から追払ったというわけだ。その間彼奴らは、君の機械をつかって、重大なる通信連絡をやったのに間違いない。そういえば、僕等の方にも思いあたることがある」
 さすがの帆村も、これを聞いて、呀《あ》っと愕《おどろ》いた。それではあの諜者連は彼の持っている短波通信機に用があったのか。
「すると留守番の大辻はどうしたんだろう」
 大辻はそれから一週間目に、冷い死骸となって帆村のところへかえってきた。
 なぜそんなことになったか。
 その間の消息はのちに、帆村が帳簿の間から発見した大辻の手記によって明らかになった。それには鉛筆の走
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