の答をとることが分った。すなわち A=4 と A=9 の二つの場合である。
 A=4 なら、744×8 となって、答は 5952 となる。また A=9 なら 749×8 となって答えは 5992 となる。どっちも一の位は2である。これが第一の発見である。
 それに元気づいて、なおも考えをつづけてみると、果然不可解の数字のうち二つまでが確定することが分ったので、帆村は躍りだしたいほどの悦びを感じた。
 それはいずれの桝形《ますがた》の中の数字であろうか。
 結論を先にいうと、H=5、I=9 と決定するのである。なぜならば右にのべた A=4 の場合は 5952 であり、A=9 の場合は 5992 であり、この二つを比べてみると、千の位と百の位はどっちも同じ 59 である。だから当然 H=5、I=9 でなければならぬ。
「なるほど、これは面白い答だ」
 と、帆村は口のうちに叫んだとき、彼ののった円タクは、新宿|追分《おいわけ》の舗道に向ってスピードをゆるめ、運転手はバック・ミラーの中からふりかえって、
「旦那、この辺でいいですか」
 とたずねた。
 帆村は大切なノートをポケットに収《しま》っ
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