事項になると、大辻にも云い明かしかねたが、程よく大意を伝え、ここ五日ほど不在にする事務所の留守を、かねて云いつけて置いたとおりによくやるよう頼んだ。
「先生、僕を連れていって下さらないので心配です。しかしお伴がかなわないということでは仕方がありませんが、どうかくれぐれも身辺を御用心なすって下さい」
と、大辻助手はしきりに帆村の身の上を案じていた。
それからいよいよ帆村の活動が始まったのである。全くの一本立だった。自分の頭脳と腕力とが、只一つの資本だった。
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※[#丸1、1−13−1]x=□□□□□□=74□×?
[#ここで字下げ終わり]
さあこれをどう解いてゆくか、この奇妙な暗号の謎を。
とにかく次に目指すは※[#丸2、1−13−2]だ。銀座の帝都百貨店の洋酒部とある。
かれはすぐその足で、地下一階にある洋酒部の売場に近づいた。
ぶらりぶらりと客を装いながら洋酒売場を物色するうちに、彼は遂に、問題のスコッチ・ウィスキーの絵看板を洋酒の壜《びん》の並ぶ棚に見つけた。なるほど赤い上衣をつけた西暦一千七百年時代の英人が描いてあった。近づいてみると、鼻の頭に、
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