数字は、どうしてこっちの支社へ知らせてくるんだと思われますか」
「さあ――」
「実をいうと私たちにも、まだよく分っていない」
「それではどうも――」
「いや、しかし貴重な手懸りだけはやっと掴んだのです。見て下さい。これです」
そういって木村氏が帆村の眼の前に持ち出したのは、黒い折鞄《おりかばん》であった。
折鞄のなかから現われたのは、一体なんであったろうか。それは四六倍判ぐらいの板であって、その上に大きな金色のペン先がとりつけてある。察するところペン先の広告看板なのであった。英国の或る有名なペン先製造会社の名が入っていた。そしてこの看板をぶらさげられるように、金具がうってあった。
「これは面白いものですね。しかしどうしてこれが暗号の鍵の数字に関係あるのか分りませんが」
と、帆村は首をふった。
「それは今説明します。立派な説明がつくのです。これをごらんなさい」
といって、木村氏は鞄の中から懐中電灯のような細長いものを出して、ペン先の看板の裏へかざした。
「さあ、いま私がこの紫外線灯のスイッチを押して、この裏板へ紫外線をあててみます。すると一見この何にも書いてないような板の上に実に
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