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[#ここで罫囲み終わり]
ここまでは進んだが(第十図)――あとはどうもうまく決らない。帆村は苦しそうに呻《うな》りながら寝返りをうった。
「どうして解けないのだろうか。おれの頭はばかになったのか」
帆村は拳をかためると、自分の頭をガンとなぐった。
「駄目だ。解けない」
帆村は算術地獄におちこんだと思った。さもなければ、頭脳が麻痺《まひ》してしまったのだ。ここまで解きながら、答が出ないとは何としたことであろう。はるばる富山まで来て、交番の奥の間に呻吟《しんぎん》している自分が世界中で一番哀れなものに思われた。どうにでもなれ!
そのうちに酒が身体に廻ってきた。疲労の果《はて》か酒のせいか、彼はうとうとと睡りはじめた。
謎は解けた
ぱっと目がさめたとき、彼は急に気分のよくなっていることに気がついた。
彼は再びノートをとりあげた。
暫くノートの表を凝視《ぎょうし》していた彼は、思わず、
「うむ」
と、呻って目をみはった。
彼は畳の上をとんとんと激しく叩《たた》いた。
隣室に待っていた栗山刑事が、とぶようにして入ってきた。
「帆村さん、どうしました」
「おお、栗山さん。今日東京へ飛ぶ旅客機に間にあいませんか」
「えっ、旅客機ですか、こうっと、あれは午後一時四十分ですから、あと四十分のちです。それをどうするんです」
「僕は大至急東京へ帰らねばなりません」
「そんな身体で、大丈夫ですか」
「いや、大丈夫。謎が解けそうです。すぐ帰らねばなりません。どうか飛行場へ連れていって下さい」
親切な栗山刑事は、帆村の身体を抱えるようにして旅客機の中へおくりこんだ。
午後一時四十分、ユニバーサル機は東京へ向けて出発した。
帆村は青い顔を窓から出して、見送りの栗山刑事へ手をふった。そしてほっと溜息をついた。
とうとう四日間というものを欺《だま》されとおしてきたのだ。
帆村の心は穏《おだや》かでない。
割り算の鍵《キイ》は一体どうなったのか。
鍵は解けないともいえるし、解けたともいえた。なぜなら予期した六桁の数は遂に分らないのだ。分らないように出来ているのだ。なぜなら答が二つも出るのである。
問題は答の二桁目のXだ。これは5か9かのどっちかというところまで進んでいたが、今となっては、5でもよければ9でも差支《さしつか》えないことが分った。つまり答は二つだ。
Xが5であれば、求める六桁の被除数は 638897 となる。またXが9であれば、668857 となる。暗号の鍵の数字に、二つの答があってよいものか。ぜひとも一つでなければならない。そこにおいて帆村は万事を悟《さと》ったのだ。
「うぬ、一杯喰わされた」
彼ははじめて夢から覚めたように思った。なぜ彼は欺されたのか。彼の敵は、帆村をどうしようと思っていたのか。すべては謎であった。それを解くには、一刻も早く東京へかえるより外ないと気がついたのである。
どうやら東京には、彼の想像を超越した一大変事が待ちかまえているようである。一体それは何であろうか。
帆村の羽田空港に下りたのは午後四時だった。彼は早速電話をもって、木村事務官を呼び出した。
ところが意外にも、内務省では、木村事務官なぞという者は居ないと答えた。いくど押し問答をしても、居ない者は居ないということであった。
遉《さすが》の帆村も顔色をかえた。今の今まで、内務省の情報部を預るお役人だと思っていた木村なる人物が夢のように消えてしまったのである。
さてはと思って、こんどは自分の事務所を呼び出した。
すると、電話が一向に懸らないのであった。留守番をしているはずの大辻は何をしているのであろうか。胸さわぎはますますはげしくなっていった。
もうこれまでと思った帆村は、空港の外に出ると、円タクを呼んで一散に東京へ急がせた。
木村事務官は消えさり、事務所は留守で、大辻は不在だ。そして自分は変な謎の数字にひきずられて四日間というものを方々へ引張りまわされた。一体これはなんということだ。
「ははあ、そうか。こいつはこっちに油断があって、うまく欺されたんだ。うむ、すこしずつ見当がついてきたぞ。相手は例の秘密団体の奴ばらなんだ!」
帆村の顔は、次第に紅潮してきた。
自宅にかえった帆村は、早速各所に連絡をとって情報を集めた。そして遺憾《いかん》ながら彼が欺されたことを認めないわけにゆかなくなった。
すぐさま駈《か》けつけてくれた専門家の説明によって、一切は明らかになった。帆村を欺した
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