、探偵は気が遠くなってふらッとなった。
ここまでは探偵のあざやかな負けだった。が、彼が気を持ち直して、頤《あご》のところをおさえて立上ったとき、下へぱらりと落ちたものがある。封の破れている手紙だった。それが収穫物だったのだ。
さすがに探偵で、普通の者なら一顧もしないものを、彼はポケットへねじこみ、それから公園へ躍りこんだ。それはさっきの男を捕えるためだった。だが公園の中はひっそりかんとしていて、野球やキャッチボールをしている者はない。探偵は歯がみをしたが、どうにもならなかった。
が、後で彼は例の封の破れた手紙をポケットから出して拡げてみたところ、これは彼を昂奮させずには置かなかった。すなわち一枚の紙に書かれた全部は、悉《ことごと》く片仮名ばかりの文章であり、一度読み下してみると、それが正に暗号文であることがはっきり分ったのである。
その文章は、次の通りであった。
「クルマカンニセンコクアリシンネンノエンカイイマナオエンキザンネンナリタンネンベルクカイセンノケツカハシゼンチホウミンノシンノバンサンカイインニカンセズナオミンカンニソノサンカンヲコワントカンゼシナランイマケエイツノソ
前へ
次へ
全25ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング