を見せないことが分った。どこか他の場所に泊っているらしい。
そしてこの男の所在を、弓削組でもどうやら気にしていることが判明したが、それとは別に、烏啼の一派が弓削組以上に、鬼二郎の所在を知りたがって、いろいろと手を廻していることが分った。そして首領の烏啼天駆自身はまだ顔を出していないが、彼の義弟である腕きき男の碇健二などは、いくどもこの鬼二郎の家へやって来たことが、近所の人々の話から分った。
笹山鬼二郎は相当の悪党でもあり、頭脳も腕も胆力も衆にすぐれているらしく、この前の虎の門公園の出会《であい》においても、遂にあの秘密地図の半分を相手に渡さないでしまったことは確実だった。そのとき彼は反《かえ》って逆襲に出で、烏啼組に一泡も二泡もふかせたらしい。現にその夜の烏啼組のリーダーだった碇健二さえ右腕を引裂かれた上に昏倒《こんとう》してしまい、部下の者たちは周章《あわ》てて彼を肩に引担いで後退したほどだった。
そういう鬼二郎のことだから、早くも形勢をさとって行方をくらましたのであろうが、袋猫々にとっても彼鬼二郎の所在は一刻も早く突きとめたく、その上で鬼二郎が金山源介を本当に殺害して彼の利権
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