ばに、探偵の瞼は重くなり、抱えていた機銃をごとんと足許へ取落とした。が続いてその機銃の上へ、彼の身体が転がった。
三人の金庫破りの名人たちも、ばたばたばたと倒れてしまった。
みんな死んだ。いや人事不省かも知れない。そしてこれは僅《わず》か数秒間の出来事であった。一体何事が起ったのであろうか。そのとき、どやどやと足音がして雪崩《なだ》れこんで来た十数名の男たち。彼らは申し合わせたように防毒面をつけていた。
そして烏啼以下五名の賊徒を引担ぐと、踵《きびす》をかえして急いで部屋を出ていった。
あとに袋猫々ただひとりが、森閑とした部屋に取残された。
烏啼の館では慰労の夜宴が開かれた。
「あのポンスケ探偵も、今頃はさぞおどろいているでしょうね」
「ふふン、まさか毒|瓦斯《ガス》で呉越同舟の無理心中をやらかすとは気がつかなかったろう」
碇が掌の中で壊した硝子のアンプルの中には、無臭の麻痺瓦斯が入っていたのである。
「烏啼組じゃなきゃ見られない奇略ですね」
「なあに、大したことはない」
「われわれを一ぱい喰わしたつもりが、まんまと重要書類をさらって行かれて袋猫々先生、さぞやさぞなげいてい
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