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   紙に窓をあける


 黒丸がンの字だ。
「それを句読点とする。すると始めの文字から拾っていって、四字・二字・五字・一字・二字・七字・二字・一字・……待てよ、これは駄目だ。こうして勘定していくと、内容文字は七十五字となる。句読点が二十五だから、これを百字から引いて七十五字だ。……七十五字ではおかしい。……後半の百字がどうやら暗号内容文だと思われるんだがそれは百字ある。七十五字ではない。するとこのンを句読点とする考えは駄目だ」
 ではどう解くのか。
 もう一度元へ戻って、百と二十五と四だ。百は全字数。二十五はンの字数、四は……四は四角だ。二十五掛ける四は百だ。
「ンのある場所を拾ってみると、第五字、第八字、第十四字、第十六字、第十九字、第二十七字、第三十字……となる。試みに、その番号に相当する文字を、後半の百文字の中から拾ってみよう。
 すると第五字(イ)、第八字(ソ)第十四字(ギ)、第十六字(ア)、第十九字(ン)、第二十七字(ゴ)、第三十字(ウ)……であるから、この順に文字を拾ってみると――イソギアンゴウ――イソギアンゴウ――“急ぎ暗号”かなよろしい。もっと先を拾ってみよう。
「第三十二字(ヲ)、第三十六字(モ)、第三十八字(チ)、第四十五字(テ)、第五十三字(モ)、第五十八字(ウ)、第六十一字(シ)、第六十四字(ア)、第六十六字(ゲ)、第七十字(マ)、第七十三字(ス)――ヲモチテモウシアゲマス。始めからだと“急ぎ暗号をもちて申上げます”となる、これだ。
 後半の文字の中から、ンの文字の個所にあたる文字を拾えば、暗号は解けるのだ。よし分った。それなら先をつづけよう。
「“急ぎ暗号をもちて申上げます例の男は”――ここまでで二十五字となる。これだけでは文章が尻切れ蜻蛉《とんぼ》だ。その先はどこに隠れているのだろう。
 もっと暗号文は永く続いているのではあるまいか。用箋の第二枚、第三枚があるのではなかったか。しかし封筒の中にはいっていたのは用箋一枚きりだった。困った」
 袋探偵は行詰って、紙片をいまいましく眺める。
 もうすこしで解けるような気がする。それでいて、手掛かりが見つからない。脳髄がちょっとすねているらしい。
 どうしてやろうか。
 袋探偵は呻《うな》っている……がそのとき彼は声をあげた。
「あ、これかな」探偵は白黒表の最後のところのンを指す。第百字目のンだ。「四角の枠の隅っこにンの字があるのはこれだけだ。他の三つの隅にはンがない。……するとこの窓はうまく明けてあるのかもしれない。……あっそうだ。四角だ。正方形だ、十字ずつの正方形だ。横にしても、さかさにしても同じ形の同じ大きさだから、ぴたりと重なる。よろしい。きっとこれだ。後半の百字を、同じように四角に並べてみよう」

[#ここから3字下げ]
いまけえいつのそさま
じにくぎじあまとんつ
まいせりんこごらみう
いをだいはもらちちの
とれまかてぎをちまめ
ちいもしうととうみけ
してもあえげいこりま
よとすかいるうよれお
いんんうはのなおなす
をとれつこたでれすは
[#ここで字下げ終わり]

 こうしておいて、前半の文字を四角に並べた白黒表をこの上に重ねる。ンのところ――つまり黒丸のところだけをナイフで穴をあけておく。ここに出してあるような形だ。
           3↓
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