探してみた。まず手にあたったのは、柱の切り屑のような木片だった。のけようと思ってひっぱったが、しっかり天井裏にくっついている。その横の方に手を廻すと、ヒィヤリと金具らしいものが、指先にふれたので、それをグッと掌のうちに握った。
「おや、これは懐中電灯ではない」
 ズシリと重みのある、そして大変冷たい物体だった。暗闇の中に、仔細に手さぐりをしてみると、正しくそれはピストルだった。
「こんなところに、ピストルが落ちていた」
 彼は一瞬にして或る場面を想像した。この屋根裏に忍びこんだ犯人が、この節穴から、下の老人を狙いうったのであると。では先刻ムサシノ館前の十字路で聞いたように思った音響は、このピストルの音だったのかも知れない。
「オイ、誰かッ。降りてこい!」
 いきなりサッと明るい光線が帆村の横顔を照した。警官が、さっきのぼって来た押入の天井裏から、こちらを誰何《すいか》したのだった。
「僕は……」
「文句があるなら後でいえ。サッサと降りて来ないと、ぶっ放すぞ」
 本気にぶっ放すかも知れない警官の意気ごみだった。帆村は苦笑いをして、それ以上の頑張りをやめ、拾ったピストルだけを獲物に、そのま
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