ネオン横丁殺人事件
海野十三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)嚔《くしゃみ》を
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)徹夜|麻雀《マージャン》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#丸付き印、245−下−8]
−−
1
近頃での一番さむい夜だった。
暦のうちでは、まだ秋のなかに数えられる日だったけれど、太陽の黒点のせいでもあろうか、寒暖計の水銀柱はグンと下の方へ縮《ちぢ》[#ルビの「ちぢ」は底本では「ちじ」]んでしまい、その夜更け、戸外に或いは立ち番をし、或いは黙々として歩行し、或いは軒下に睡りかけていた連中の誰も彼もは、公平にたてつづけの嚔《くしゃみ》を発し、
「ウウウン、今夜は莫迦《ばか》に冷えやがる」
といったような意味の独言を吐いたのだった。
猟奇趣味が高じて道楽に素人《しろうと》探偵をやっているという変り種の青年理学士、帆村荘六君も、丁度この戸外組の一人だった。彼は今、午前三時半における新宿のブロード
次へ
全29ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング