。ホラ扉《ドア》の開けっぱなしになっている……」
「犯人は此奴《こいつ》ですか」
「さア、まだ何とも云えないが、あの部屋から飛び出してきて、いきなり私に切ってかかったのでネ」
と帆村は一振の薄刃《うすば》の短刀をポケットから出してみせた。
怪漢は縛られたまま廊下に俯伏《うつぶ》せになって転がっていたが、動こうともしない。その横をすりぬけて、私達は気懸《きがか》りの事件の部屋へ行ってみた。
「驚いちゃ、いけませんよ」帆村は一同に念を押しながら入口のスイッチをひねった。室内は急に明るくなった。一間《ひとま》通り越して奥まったところに八畳ほどの洋間があった。白いシーツの懸っている寝台があったが、こいつが少しねじれていた。が、ベッドの上は空っぽで、求める事件の主は、いま入った戸口に近い左側の隅っこに、大の字に伸びていた。若い長身の男だが、四角い頤《あご》が見えるばかりで、上の顔面は見えない。なんだか黒い布を被っているように見えたが、見るとそれが赤い血潮《ちしお》だった。残酷《ざんこく》に頭部をやられているのだ。右肩を自分の手で抑《おさ》えているが、肩もやられているらしかった。見ていると、フ
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