しい鳴りものがし、ぴかぴかと電光が光った。
「あッ」
「東助さん」
とつぜんの変事に、二人はしっかり抱《だ》きあった。しかし二人の目は、樽からはなれなかった。
その時、樽の煙突からすうッと白い煙がでて、高くのぼった。と、その煙の中から、大きな人の顔があらわれた。鼻の高い、ひげもじゃの、あまり見かけない顔だった。
何者であろうか、その怪人《かいじん》は?
怪《あや》しい博士
ほんとうのことをいうと、東助とヒトミは気をうしなう一歩手前までいった。しかしそれをようやくがんばることができた。二人は見た。樽の煙突の中からたちのぼった白い煙の中から、背の高い怪人があらわれて、そばに立ったことを。
「あなたがた、こわがること、ありましぇん。わたくし、ポーデル博士であります」
怪《あや》しい人は、そういって、二人の方に笑って見せた。彼は外国人のようであった。脂《あぶら》ぎった白い顔に、ほほひげがもじゃもじゃだ。大きな鼻の上に、黒い眼鏡をかけている。頭の上には、小さな四角い大学帽がのって、上から赤い房がたれている。そういえば、この怪人は肩から長い緋色《ひいろ》のガウンを着ていた。
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