の光がさしこんでいて、しばらくすると二人の目がやみになれて、室内をどうやら見定めることができるようになった。
このだだっぴろい地下室には、なんにも残ってなかった。――いや、一つだけあった。奥の隅《すみ》っこに、一つの黒ずんだ樽《たる》がちょこなんと床の上におかれてあった。二人は同時にそれを発見したので、同時にびっくりして、両方からよりあって、手をにぎった。
「あれが空を飛んでいたんだ」
「そうよ。やっぱりこの穴へ落ちこんだのね。なんでしょう、樽みたいだけれど……」
「そばへよって、よく見てみよう。だけれど時限爆弾じゃないかなあ」
「そんなものが今空をとんでいるはずはないわ。きっと樽よ。中にお酒か、金貨《きんか》が入っているんじゃない」
「よくばっているよ、ヒトミちゃんは。そばへよってから、どかんと爆発して、死んでしまっても知らないよ」
「だって、ただの樽の形をしているわ。きっとぶどう酒が入っているのよ」
「ぶどう酒が入っている樽が、どうして空をとぶんだい。へんじゃないか」
そういっているとき、とつぜん樽に小さい煙突《えんとつ》みたいなものがはえた。と思ったら、にわかにどろどろとあや
前へ
次へ
全126ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング