「先生こんにちは。この羽織や袴をどうなさるのですか」
「やあ、君たち、きましたね。この着物を、わたし、着ます。そして日本人に化《ば》けるのです。見ていて下さい」
「日本人に化けてどうするのですか」
「あなたがたを、ふしぎな国へ案内するためです。今日は心霊実験会《しんれいじっけんかい》へつれていきます」
「心霊実験会とは、どんなことをするのですか」
「待って下さい。先に変装をすませますから」
ポーデル博士は、鏡の前へいって、眉《まゆ》を黒く染めたり、高い鼻をおしつけて低くしたり、ひっこんだ目を少し前にだしたり、顔に黄色い顔料《がんりょう》をぬったりした。それから袴《はかま》をつけ、羽織《はおり》を着た。するとそこにはいつもの博士の姿は消えて、人のいい老日本人がにこにこ笑っているのだった。
「さあ、これでいい。日本人と見えましょう。わたくしは今日は、松永さんという老人に化けました。松永さんは、心霊実験会の会員として知られています。松永老人がいくと、その心霊実験会の方では安心して会場へ入れてくれます。会員でない人がいくと、なかなか入れてくれません。それでわたくし、松永老人に化けました」
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