今、できませんよ。わしもみなさんも大火傷《おおやけど》しますからね。とにかく困ったものだ。早く人工重力装置の故障が直ってくれないことには、仕事がさっぱりできません。はい只今」
 そういいながら、髭のコック長は、蛙のような恰好で料理場へとびこんでいった。
 とたんに、停電のように急にあたりが暗くなった。


   人間はおき去《ざ》り


「どうです。重力のない世界はおもしろかったですか」
 いつの間にかポーデル博士が、操縦席からうしろをふりかえって、東助とヒトミに呼びかけた。
「ああ、コック長だ。博士はコック長に変装していたんですね」
「ははは。見つけられましたね」
「髭《ひげ》だらけのコック長なんて、見たことがありませんわ」
「ははは、髭はとった方がよかったですね。さて君たちにたずねます。今訪問した世界は、宇宙艇の中の出来事でありました。ところが、もし、ああいうことが、地球の上で起ったとしたら、どんな現象が起るでしょうか」
「地球の上で生活しているとき、急に重力がなくなったら、どうなるかというんですか」
「そうです。どんなことが起りますか」
「分りました。私たちは鳥のように高い空をと
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