ダイナモの力を借りて、ぼくはその紐を全然見えないものにしてしまったのだ」
猫の実験
見えない人ドクター・ケンプは、一息ついた後で、ふしぎな物語をつづける。
「ものに光があたったとき、その形が見えるのはなぜか。それは光がその物体にあたって反射するからだ。あるいは光が中へはいって屈折するからだ。もし光があたっても、光が反射もしなければ屈折もしなければ、ものガラスの形は全然見えなくなるのだ。……硝子《ガラス》板は透明だが、ちゃんと形が見える。これは反射のない場合でも、光は空気の中よりも硝子の中でひどく屈折するからだ。
その硝子板を水の中につけてみる。と、こんどは前の場合よりずっと見えにくくなる。これは水の屈折率が硝子の屈折率とほとんど同じだから、光は硝子板をまっすぐに通りすぎる。そこで硝子板の形が見えにくくなるのだ。……もし硝子板をこなごなにこわした上で、水の中に入れてみる。するとその硝子の粉は、ほとんど完全に見えなくなる。これが偉大なるヒントだ。だからもし人間のからだの屈折率を、空気と同じにすることができればいいんだ。そして同時に、光を反射もしないし吸収もしないようにする
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