どはその上へ人間が降ってきて、どすン。
「ああ、痛い!」
「あなた。ほらごらんなさい。だから庭へ寝椅子《ねいす》をだして、おやすみなさってはいけませんと申したのに。これからは地下室でおやすみになるんですよ」
「分った、分った。これからそうするよ、ハックショ!」
この家の主人は、顔をしかめて、うなずいた。
「どうしたのですか、あの男の人は」
「あれは、庭で寝ていたところへ、月がでたのです。月の引力で、あの主人は百メートルも上空へ引張りあげられていたのです。さっき月がかくれたから、また下へ落ちてきたというわけ。どうやら風邪《かぜ》をひいたようですね。お気の毒、あります」
永久機関《えいきゅうきかん》
「水を高いところから下に落すのです」
と、ポーデル博士が、東助とヒトミに語る。
「下には水車《すいしゃ》があります。さっきの水は、この水車がうけます。そこで水車がまわります。よくわかりますね」
「はい。わかります」
水車というものは、みなそうしてまわるのである。なんのことだと、東助もヒトミも退屈の顔になる。
「その水車の力によって、こんどは水を下から上へあげます。その仕掛は、エスカレーター式なものでもいいし、鉱山で使う吊《つ》りバケツ式でもいいし、また吸上《すいあ》げポンプを動かすことにしてもいいです。とにかく下の水を上にあげます。こうして上げた水を、また下に落して水車をまわすのです。これをくりかえしたら、どんなことになるでしょうか」
ポーデル博士は、そこで二人の顔をじっと見た。
東助とヒトミは顔を見合わせた。
そんなことをくりかえしたら、いつまでたっても、同じことがつづきそうだ。
東助は、そのとおり答をいってみた。
「昔これを考えた人は、こうしてくりかえし水を落しては水車をまわし、水車の力で水を上にあげ、またその水を落し、こうしてやっていくと、ほかから力をあたえないでもその運動は永久につづくと思ったのです。ところが、それはあやまりでありました。そうはいかないのです。けっして永久にはつづきません。やがてとまってしまうのです。なぜだか、わかりますか」
博士にそういわれると二人は困った、よくわからない。
「永久運動をする仕掛を、永久機関といいますが、これはもし本当にできることなら、たいへん便利な機械です。なぜといって、一度運転をはじめたら、あとは燃
前へ
次へ
全63ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング