》の群《むれ》を襲う熊蜂《くまばち》の群のように、敵艦にとびついていったが、まことにふしぎな、そして奇怪な光景であった。それから十五分ほどたって、四隻がてんでに舷側《げんそく》から火をふきながら、仲よく揃って、ぶくぶくと波間《なみま》に沈み去ったその壮観《そうかん》たるや、とても私の筆紙《ひっし》に尽《つく》し得るものではなかった。
 ロッセ氏は、映幕《スクリーン》の前に、金博士の手を握り、子供のように慟哭《どうこく》した。余程《よほど》嬉《うれ》しかったものと見える。無理もない、それは確実に、印度民族|奮起《ふんき》の輝かしき序幕を闘いとったことになるのであったから。
 しかしその日の新聞電報は、地中海から廻航中《かいこうちゅう》の英艦隊が、例によってドイツ潜水艦のため、多少の損傷《そんしょう》を蒙《こうむ》ったとだけ報ぜられ、四隻とも即時《そくじ》撃沈《げきちん》されたことにも、また金博士の弩竜号が活躍したことについても、全然|触《ふ》れていなかったのは、どうしたわけか、私には一向分らないところである。



底本:「海野十三全集 第10巻」三一書房
   1991(平成3)年5月
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